水産大学校 生物生産学科 助教授 稲川裕之
(図はクリックで拡大)
私たちは、医薬同源の発想から、安全・安心な自然免疫賦活剤を長く食経験のある食材に求め、経口や経皮(食べたり、肌に塗ったり)で免疫賦活効果を示すものを探しました。また、スクリーニング方法としてマクロファージの活性化(プライミング:**の項を参照)に着目しました。
広く食品素材を中心としたスクリーニングを行い、小麦粉の水抽出物の中に強力なマクロファージ活性化物質が含まれていることを発見しました。この物質はその後の研究で、小麦に共生しているグラム陰性細菌の構成成分である分子量約5000の糖脂質であることが判明しています。
構造は図1にお示しいたしますように、脂質部分と、糖質部分からなる両媒性物質です。私達はこの物質をLPSpと名づけました。
LPSpが安全なものであることについて説明致します。第一にLPSpが由来するパントエア・アグロメランスは欧州では生菌が噴霧剤として、果物の防カビ用に使われています。また小麦の他にサツマイモ、シイタケなどの食用植物と共生していることも知られております。パントエア・アグロメンランスは長年に渡って食べられていたと考えられます。即ち、食経験をもった微生物といえます(図2)。
第二に、LPSpはGLPに準拠したプロトコールに従い反復投与毒性試験を行いました。その結果、毒性は認められませんでした。以上よりLPSpは経口投与では安全性に問題がないことが確認できました。
実際にLPSpを経口、経皮で、種々の動物疾患モデル、ヒトの病気に対して適用すると、様々な疾患に対して改善効果があることが示されました。しかし、LPSpを1g取るために、小麦粉を10トン準備しなくてはならず、実用化は極めて困難でした。これを解決したのが、小麦発酵抽出物です。すなわち、パントエア・アグロメンランスを小麦粉で培養し、熱水抽出することで、効率よく、そして安価にLPSpを高濃度含むエキスを取ることが出来ました。
小麦発酵抽出物が安全なことは動物を用いた試験で確認されています(安全性試験:**の項を参照)。そして、LPSp同様に小麦発酵抽出物がヒトやマウス、ニワトリ、クルマエビ等の広い生物のマクロファージを活性化することを見出しました。

