特定非営利活動法人 環瀬戸内自然免疫ネットワーク

糖脂質によるスキントラブルの予防と改善

徳島文理大学 健康科学研究所 研究員 河内千恵
(LSIN 自然免疫賦活技術研究会 スキンケア部門長)

(図、写真はクリックで拡大)

スキントラブルの多くは、角質の水分量の低下が原因の場合が多いと言われます。水分量が低下し肌が乾燥すると、皮脂膜もうまく作れなくなります。その結果、アレルゲン(アレルギーの原因物質)や刺激性の物質が皮膚から入りやすくなり、皮膚のトラブルが生じやすくなるのです。また、乾燥した皮膚は紫外線抵抗力も弱くなっています。シワあるいはかゆみの原因も皮膚の乾燥によるところが大きいでしょう。ですから、スキントラブルの多くは、保湿することによって、予防することができることになります。さて、グラム陰性細菌由来の糖脂質は、親油性の脂質部分と、親水性の糖鎖部分からなる両親媒性物質で、水溶性基材に混ぜ込んで皮膚上に塗布すると、親油性の側が皮膚上の皮脂になじみ、皮膚表面では、水分保持および保護に働くことが予想されます。このことから、糖脂質という素材は、基本的なスキンケアに適した素材といえるのです。徳島文理大学の杣教授が長い年月をかけて研究してきたパントエア・アグロメランス由来の糖脂質、およびこれを十分に含有する小麦発酵抽出物は、その代表的な素材です。

さて、パントエア・アグロメランス由来の糖脂質は、保湿効果に加えて、トラブルのある皮膚に改善をもたらすことが、種々のトライアルの結果確認されています。特にやけどや床ずれの創傷の治癒を早める効果、およびアトピーの改善効果が認められています。これは、どんなメカニズムによるのでしょう。

少しだけ専門的な話になりますが、皮膚表皮には、ランゲルハンス細胞というマクロファージ類縁細胞が存在しています。また真皮にもマクロファージがその他の免疫担当細胞と共に存在しています。このマクロファージという細胞は、全ての多細胞動物に存在する原始的な細胞で、実は生体防御全般に重要な働きをしている細胞なのです。例えば、体内に侵入してきた病原菌や、老化したり傷ついて役に立たなくなった自分自身の細胞を貪食してしまうとか、種々のサイトカインを分泌して免疫系を調節するとか、その作用は、多岐にわたると同時に生体恒常性維持の根っこの部分に係わっています。そして糖脂質は、このマクロファージの最も強力な活性化剤なのです。

糖脂質によって表皮内に存在するランゲルハンス細胞が活性化されれば、熱や紫外線などにより損傷した皮膚を貪食除去するとともに、真皮の免疫担当細胞を活性化して修復再生を促すと考えられます。また、細菌の感染があった場合には、マクロファージ系細胞がこれらを貪食したり、マクロファージ系細胞から抗菌物質が産生されたりすることで、直接的殺菌効果を発揮し、感染防御機能が増強されます。

マクロファージは体内でネットワークを作っていると予想され、表皮のマクロファージの活性化は真皮のマクロファージにも伝達されます。真皮の、活性化されたマクロファージは、アトピーなどアレルギー疾患を起こしやすくなった免疫系を逆方向に是正します。(このあたりのことについて、もっと詳しく知りたい方は「Th1系」、「Th2系」、「自然免疫」、「アトピー」などをキーワードにインターネット検索してみてください。あるいはLSINに直接お問い合わせくださっても結構です。)

以上のような原理が、パントエア由来糖脂質によるスキントラブル改善につながっていると考えられます。ただ糖脂質がステロイドや抗炎症剤のような薬と比べて決定的に違う点は、作用原理がマクロファージの活性化、すなわち、生物が本来持っている生体恒常性維持能力の活性化にあり、皮膚トラブルの予防・改善のために、副作用の心配なく、日常的に使えるという点でしょう。

それでは、糖脂質が実験室でマクロファージ活性化効果があるとして、皮膚に塗った時に、本当に皮膚内部に浸透していっているのでしょうか?糖脂質は、由来するグラム陰性細菌によって種類がまちまちです。大きさも違います。杣教授の研究によれば、少なくともパントエアの糖脂質は、平均分子量が5000で、溶液中では、ミセル構造(脂質部分あるいは糖鎖部分が集合して球状になること)をとり、その推定直径は60nm程度になります。つまり、ナノサイズの分子なのです。物質の種類にも依存しますが、皮膚に吸収される最大直径は250nmとされていますので、パントエアの糖脂質は、皮膚表面から適度に吸収されうる大きさと性質を持っているのです。

LSINは、糖脂質のポテンシャルをいかにしてスキンケアに応用していくか、真剣に取り組んでいます。

 

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